気候変動への取組み
1. 気候変動に対する本投資法人の認識
本投資法人では、気候変動に対するレジリエンス向上について次のように認識しています。
- 「パリ協定」(2015年)、「国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)1.5℃特別報告書」(2018年)、「IPCC第6次評価報告書」(2023年)などにおいて示されるように、気候変動の進行は科学的事実である。
- 気候変動の進行は自然環境と社会構造に劇的な変化をもたらし、本投資法人の経営とビジネス全体に重大な影響を与える課題である。
- 気候変動がもたらすリスク・機会について識別・評価・管理を行い事業のレジリエンスを高めることは、本投資法人の持続可能かつ安定的な収益を長期的に確保するためにも必要不可欠な事項である。
2. 気候変動関連財務情報の開示方針
- 本資産運用会社は、気候変動関連財務情報の開示を推進するため、2022年4月18日付けでTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォ-ス)への賛同を表明しました。
- TCFDは、各主体の気候変動に関する取組みについて、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目に分けて開示することを推奨してきました。
- その後、TCFDはIFRS(国際会計基準財団)のもとに設立されたISSB(国際サステナビリティ委員会)に活動を承継のうえ2023年10月に解散しましたが、引き続き、本資産運用会社ではTCFDが推奨した開示メソッドを活用して、本投資法人の気候変動関連財務情報を発信していきます。
3. 基本方針・コミットメント
本資産運用会社及び本投資法人はパリ協定で定められた国際目標を支持し、気候変動の緩和に貢献するため、温室効果ガス排出の削減に取組み、2050年度までにネットゼロをめざします。
4. 気候変動関連財務情報
【ガバナンス】
本資産運用会社におけるサステナビリティ(気候変動への対応を含む。)に関する推進体制は、サステナビリティ推進体制に記載のとおりです。
【戦略】
■ シナリオ分析
- 本投資法人が保有するポートフォリオを対象に下記のシナリオ分析を実施しました。
- 今後、保有物件の入替などにより、分析結果は変わる可能性があります。
| シナリオ区分 | シナリオの概要 | 参照した情報源 |
| 4.0℃シナリオ | 今世紀末における世界の平均気温が産業⾰命以前(1850~1900年)との⽐較で+4.0℃ の上昇を想定したシナリオ 世界の脱炭素に向けた取組みが不十分であり、気候変動による環境への影響は危機的状況となる ⇒ 法規制強化等の移行リスク(注1)は比較的小さく抑えられる一方、自然災害の激甚化による物理的リスク(注2)は大きなものとなる |
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| 1.5℃シナリオ | 今世紀末における世界の平均気温が産業⾰命以前(1850~1900年)との⽐較で+1.5℃ の上昇に抑えることを想定したシナリオ 脱炭素に向けた取組みが早期かつ大規模に行われ、2050年には地球温暖化ガスの排出ネットゼロを達成。気候変動による環境への様々な弊害を回避できる ⇒自然災害が激甚化に至らず、物理的リスクは比較的小さく抑えられる一方、法規制強化等の移行リスクは大きなものとなる |
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(注1)「移行リスク」とは、脱炭素社会を実現するための新しい規制、税制、技術等によって生じるリスクをさします。
(注2)「物理的リスク」とは、気象の変化等、気候変動そのものによって生じるリスクをさします。
想定される世界観(1)
4.0℃シナリオ
法規制の強化が進まず、移行リスクは比較的小さく抑えられるものの、世界の脱炭素に向けた取組みの進展が不十分であることから災害が激甚化し、物理的リスクが非常に大きくなることを想定したシナリオです。
想定される世界観(2)
1.5℃シナリオ
厳しい法規制の実施によって気候変動の危機的状況を回避し、物理的リスクは比較的小さく抑えられるものの、移行リスクは非常に大きくなることを想定したシナリオです。
【リスクと機会の特定及び対応策】
- 本投資法人は、気候変動に伴うリスクと機会の特定を行うとともに、シナリオを特定し、それぞれの事業インパクトを評価する。
- また、財務的影響については、 各シナリオを参照しながら定性的に評価を行う。
1. リスク要因
(1)移行リスク(世界が気候変動を抑制する方向へ移行する際の財務リスク)
| 分類 | 想定される事象 (特定したリスク要因) |
主な財務的影響内容 (事業インパクト) |
4.0℃ シナリオ |
1.5℃ シナリオ |
リスク軽減のための 対応策・取組み |
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|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 財務的 影響度 |
財務的 影響度 |
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| 中 期 |
長 期 |
中 期 |
長 期 |
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| 政策法規制 | GHG排出コストの上昇 | GHG排出税の創設などによる運用コストの増加 | 小 | 小 | 大 | 大 |
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| 省エネルギー基準の引き上げ | 省エネルギー対応推進に伴う運用コスト(改修費用)の増加 | 小 | 小 | 中 | 大 |
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| 技術 | 省エネルギー技術の進化・普及による保有物件の陳腐化 | 省エネルギー技術導入による運用コスト(改修費用)の増加 | 小 | 小 | 中 | 大 |
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| 市場 | より高い省エネルギー性能・自然災害安全性能を求めるテナントの増加 | 競争力の喪失に伴う運用収益の低下 | 小 | 小 | 中 | 大 |
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| 評判 | 気候変動対策の遅れによる投資家・金融機関の懸念増大 | ファイナンス条件の悪化による金融コストの増加 | 小 | 小 | 中 | 大 |
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(2)物理的リスク(気候変動がもたらす物理的損害に係る財務リスク)
| 分類 | 想定される事象 (特定したリスク要因) |
主な財務的影響内容 (事業インパクト) |
4.0℃ シナリオ |
1.5℃ シナリオ |
リスク軽減のための 対応策・取組み |
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|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 財務的 影響度 |
財務的 影響度 |
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| 中 期 |
長 期 |
中 期 |
長 期 |
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| 急性 | 台風、集中豪雨など自然災害の激甚化 | 運用コスト(修繕費・ 保険料)の増加 |
中 | 大 | 小 | 中 |
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| 慢性 | 海面上昇による浸水被害の発生 | 大規模改修(嵩上げ工事等)による運用コストの増加(資本的支出による金融コストの増加を含む) | 中 | 大 | 小 | 中 |
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| 猛暑日や極寒日など熱ストレスの増加 | 空調機器に係る運用コストの増加(資本的支出による金融コストの増加を含む) | 中 | 大 | 小 | 中 |
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2. 機会要因(世界が気候変動を抑制する方向へ移行する際の財務メリット)
| 分類 | 想定される事象 (特定した機会要因) |
主な財務的影響内容 (事業インパクト) |
4.0℃ シナリオ |
1.5℃ シナリオ |
機会実現のための 対応策・取組み |
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|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 財務的 影響度 |
財務的 影響度 |
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| 中 期 |
長 期 |
中 期 |
長 期 |
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| 政策法規制 | 省エネルギー基準の引き上げに対応した保有物件の環境性能向上 | 運用コスト(水道光熱費)の低下 | 小 | 小 | 中 | 中 |
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| 技術 | 省エネルギー性能、防災性能に優れた賃貸物件の供給促進 | 自然災害に対するレジリエンス向上及びテナント誘致の促進による収益力向上 | 小 | 小 | 中 | 大 |
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| 市場 | 気候変動対策の推進による投資家・金融機関の評価向上 | ファイナンス条件の改善による金融コストの低下 | 小 | 小 | 中 | 大 |
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【リスク管理】
本資産運用会社は、本投資法人の気候関連リスクを以下のように管理している。
組織体制
本資産運用会社が気候変動関連のリスクを管理する組織体制については、本投資法人ウェブサイト「サステナビリティ推進体制」に記載のとおりである。
管理プロセス
- 気候関連課題に係る最高責任者は、サステナビリティ推進委員会で審議された、事業・財務計画上重要な優先順位の高い気候関連のリスク及び機会について、任命された関係各部署の担当者へ、その対策案の策定を指示する。
- 関係各部署の担当者が策定する対策案は、その内容に応じて、サステナビリティ推進委員会において審議の上、実行されるものとする。
- 気候関連課題に係る最高責任者は、事業・財務計画上重要な気候関連リスクを既存の全社リスク管理プログラムにおいても考慮するよう指示し、リスク識別・評価・管理プロセスの統合を図る。
【指標と目標】
本投資法人は、環境課題への対応をモニタリングするために、以下のとおり主要指標(KPI)と目標を設定する。
- 2030年度までに温室効果ガス(CO2)排出量(スコープ1,2/原単位)5%削減(2025年度基準)
- 2050年度までに温室効果ガス(CO2)排出ネットゼロ(スコープ1,2,3/総量)
